この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 宏臣は低い声ではっきりと宣言した。

 「過去最大規模の海外進出となるエネルギー企業の買収案件も、間もなく決着がつきます。名実ともに東城コンツェルンの後継者として恥ずかしくない功績でしょう。そうなれば、いくら母さんでも僕の決断を無視できないはずです」

 帆奈美はその言葉を聞き、胸が熱くなった。
 彼は彼で、自分たちの仲を認めてもらおうと必死に動いていたのだ。帆奈美がしようとしていた小細工など、まるで及びもしない大きな功績で。
 電話の向こうで、小さく息を吐く気配がした。

 《……本当に頑固ね》
 「よく言われます」
 《もういいわ。好きになさい。あなたがそこまで言うのだから、もう私にはどうにもできないでしょう》

 どこか投げやりにも聞こえる言い方だった。

 「ありがとうございます。これからも企業のトップを継ぐ者として、より一層励んでまいりますので」

 宏臣がそう言ってすぐ、母親側から通話が切れた。
 静寂が落ちる。
 宏臣はゆっくりとスマートフォンを下ろし、そのまま帆奈美へと視線を向けた。先ほどまでの冷たい鋭さは消えている。

 「帰るぞ」

 短く、それだけを告げる。宏臣は帆奈美の手を取ろうとして、ふと動きを止めた。そのまま振り返り、日高へと視線を向ける。