この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました


 仕事を定時で終え、帆奈美は日高に指定されたカフェへやって来た。
 落ち着いた照明の静かな店で、先に到着していた日高は、奥の半個室になった席でコーヒーに口をつけていた。

 「すみません、お待たせしました」

 「いえ、私もつい先ほど来たところです」
 穏やかな笑みで迎えられる。
 席に着いてアイスコーヒーを注文し、すぐに本題に入った。

 「それで……なにか進展はありましたか?」

 日高はわずかに視線を伏せ、静かに首を横に振った。

 「正直に申し上げて、難航しています。お母様のご意思は依然として強く……むしろ、固くなっている印象です」
 「そう、ですか……」

 わかっていたはずなのに、気分が沈み込む。

 (どうしたらいいんだろう……)

 答えの出ない問いに、視線を落としたそのとき。

 「副社長との結婚は、やめませんか?」
 「……え?」

 顔を上げる。言葉の意味がまったく理解できない。

 「なにを言ってるんですか……?」