この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました



 帰社後、宏臣は執務室に入るなり書類に目を通していた。

 「失礼します」

 ノックとともに日高が現れる。端正な立ち姿に隙のない表情は、いつもと変わらない。

 「例の案件ですが、先方から修正案が届いています」
 「ああ、見せてくれ」

 タブレットを受け取り、内容を確認する。相変わらず無駄のない資料だ。

 「この条件であれば、先方も前向きに検討するかと」
 「そうだな」

 短く返してから、宏臣はふと視線を上げた。

 「最近、社外での調整が増えているらしいな」
 「はい。いくつか案件を任されておりますので。個人的な事情を含む調整も必要になりますから」

 淀みのない返答に引っ掛かりを覚える。

 (個人的な事情、だと?)

 宏臣は表情を変えないまま、ゆっくりと問いを重ねる。

 「ずいぶんと踏み込んでいるんだな」
 「状況によっては、そのほうが円滑に進みますので」

 日高は微笑を崩さない。あくまで仕事の範疇だと言わんばかりに。