この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 妙な言い方に、宏臣の思考が一瞬だけ止まる。

 (……近づいてきた男?)

 ただの一般論にしては、妙に具体性がある。まるでなにかを知っているような言い方だった。
 だが、それをそのまま問い返すほど無粋でもない。

 「ずいぶんと断定的ですね」

 あえて軽く流す。

 「経験則よ。あなたは女性を甘く見すぎているわ」
 「そうでしょうか。僕はむしろ、現実的に見ているつもりですが」
 「現実が見えていないのはあなたのほうよ」

 その声音には揺るぎがない。
 しばし沈黙が落ちた。
 宏臣はグラスに手を伸ばしながら、ゆっくりと口を開く。

 「仮に、母さんの言う通りだとしても、それを決めるのは彼女です」

 視線を上げる。

 「僕ではなく」

 凪子はじっと宏臣を見つめたあと、小さく息を吐いた。

 「……本当に頑固ね」
 「よく言われます」