この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 グラスをテーブルに置き、向かいに腰を下ろす。

 「ちょうどいい縁談もあるの。家柄も申し分ないし、容姿も教養も備えている。あなたの隣に立つには申し分ないわ」
 「ずいぶんと条件の揃った方ですね」
 「当然でしょう? 東城家の跡取りの妻になるのよ」

 凪子は当然のように言いきる。
 宏臣はわずかに口角を上げた。

 「では、その方に僕が気に入られるかどうかが問題ですね」
 「あなたが選ばれる側だと思っているの?」

 ぴしゃりと言い返される。

 「失礼しました。では、僕が選ぶ側ということで」

 決定権は宏臣にあるのだと、上げ足を取る形で暗に含める。あくまで物腰はやわらかく、だが一歩も引かない。
 凪子は眉をピクリと動かし、声をワントーン下げた。

 「いい加減になさい。あの娘だって、今頃は身の程を思い知っているはずよ」
 「そうでしょうか」
 「ええ。あなたとの間にどれだけ差があるか、嫌でもわかるでしょうからね。そうしてる間に――」

 凪子は数秒間を置いてから、唇を歪めた。

 「近づいてきた男に、ころっとほだされるのが女の性よ」