この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 否定の言葉に息を呑む。

 (やっぱり、うまくいってないのかな……)

 そう思った直後だった。

 《あなたの声が聞きたくなっただけです》
 「……え?」

 意味が理解できず、聞き返す言葉もろくに出てこない。思考が追いつかず、言葉が止まる。

 《って、どうかしてますね。今のは聞かなかったことにしてください》

 冗談とも本気とも取れる言い方に、戸惑いが広がっていく。

 (どういう意味……?)

 どう返せばいいのかわからず、心が落ち着かない。
 日高が息を吐く気配がした。憂いのあるため息に聞こえて動揺する。

 《調整の件は引き続き進めています。ご安心ください》

 すぐに話を戻されてほっとしたが、先ほどの意味深な発言が頭から離れない。
 ただの言い間違い、あるいは軽口。そう思えばそれまでのはずなのに、胸の奥に小さな棘のように引っかかっている。

 (声が聞きたかった、って……)