この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 クスクス笑いながらも、宏臣はしっかり抱き留めてくれた。しかもキスというおまけ付きだ。
 恥ずかしくてもじもじしていると、「自分から抱きついてきたくせに」とからかわれた。

 「ともかく、上がってください」

 スリッパを履くような部屋でもないため、そのまま上がってもらう。一歩中に入れば部屋が見渡せるくらいの広さで、深いグレーのラグと落ち着いた木目のテーブルの奥にベッドがある。派手さもかわいさもないシックなインテリアは、男性の部屋と言われてもおかしくないかもしれない。

 「綺麗にしてるな」

 さっと見回した宏臣が言う。

 「掃除は好きなほうなので」

 少しだけ誇張する。昨夜のうちに念入りに綺麗にしたのは内緒だ。もっと日にちに余裕があれば、かわいい小物も準備できたのに、というのも心のうちにしまっておこう。

 「推しのグッズは?」
 「それはクローゼットにしまってあります」

 そう言ってから、過去の自分の発言を思い出した。専用の部屋が必要なほど、推しのグッズがあるというオーバーな発言だ。
 宏臣も思い出したらしく、含みを持たせた笑みを送ってよこす。

 「へえ、クローゼットの中に、ね」