この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 日高の声がそこで低くなる。

 「この件は、副社長にはお話しにならないでください」
 「え?」
 「副社長は、こういった〝調整〟を良しとされません」

 苦笑めいた表情を浮かべる。

 「正面からぶつかろうとなさるでしょう。それでは時間がかかりすぎる」

 たしかに、宏臣ならそうしそうだ。

 「ですが時間をかければかけるほど、あなたの負担が増える。それは避けるべきだと思うのです」

 言っていることは間違っていない気がする。むしろ現実的で優しい。

 「ですから、これは水面下での調整とお考えください。すべては、あなたと副社長のために」

 やわらかい笑みで締めくくる。
 帆奈美には反論の余地もなかった。内密に進めて、彼を喜ばせてあげたい。

 「では、本日はこれにて失礼いたします」

 丁寧に一礼して、日高は玄関の外へ出た。