その夜、帆奈美は宏臣に電話で母親が会いにきたことを報告した。《やっぱりそうだったか》と言った宏臣の口調は苦々しい。
予想していたとはいえ、実際にその場面になると想定以上に手強く、一筋縄でいかないのは痛いほどにわかった。
お互いの気持ちだけで、本当に結婚できるのだろうか。
そう弱気な心が時折顔を覗かせる。彼の母親の迫力を思い出しては体を震わせた。
(ほんとに怖かった。顔も態度も言葉も……)
宏臣には決して言えないけれど。
そうして迎えた週末の昼過ぎ、帆奈美が部屋の掃除をしているとインターフォンが鳴った。時計が午後二時を回っているのを見てハッとする。
(注文していたグッズが届くんだった)
先日ネットで注文した商品を時間指定で届くようにしていたのだ。
手でさっと髪を整えて玄関のドアを開けると、背の高いスーツ姿の男性が立っていた。
(……あれ? 荷物じゃない?)
宅配業者ならスーツは着ないだろう。
「立原帆奈美さんでお間違いないですか?」
「は、はい……」
(誰? 何者?)



