この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 紫の髪色をした年配の女性だ。金縁の眼鏡に仕立てのよさそうな鶯色のツーピースを見て、もしかしてとアンテナが反応する。

 「あなた、立原帆奈美さんよね?」
 「はい、そうですが……」
 「私は宏臣の母です」

 その言葉を聞き、背筋がピンと伸びた。事前に宏臣から『もしかしたら母が帆奈美に会いに行くかもしれない』と聞いていたが、緊張せずにはいられない。

 「少し、お時間いただけるかしら」
 「……はい」

 やわらかな言い方とは裏腹に拒否を許さない響きがあり、頷くしかなかった。
 凪子はゆっくりと一歩近づき、改めて帆奈美を頭のてっぺんからつま先まで眺める。
 露骨なほどの視線に、居心地の悪さで指先が強張った。

 「あなたが、宏臣と会っている方なのね」
 「……はい」
 「正直に申し上げるわね」

 その前置きだけで、胸の奥がひやりとする。

 「あなた、自分が東城家の嫁にふさわしいと思っているの?」

 言葉は静かなのに、刃物のように鋭い。
 ぐっと喉が詰まり、答えようとしても、すぐには言葉が出てこなかった。