この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 「家のことも大事だが、結婚するのは宏臣自身だ。相手をどう思うかが一番重要じゃないか」

 静かな言葉だったが、場の空気を少しだけ緩める力があった。

 (もっとも、この程度で引くようなら、母さんじゃないが)

 宏臣は心の中で冷静に見積もる。
 案の定――

 「認めません」

 凪子ははっきりと言いきった。

 「どんな理由があろうと、その娘との結婚は絶対に許さないわ」

 その声音には、いっさいの揺らぎがない。強く、断固とした拒絶が手に取るようにわかる。

 (まぁ、そう簡単にいくはずがない)

 むしろここからが本番だろう。

 「そうですか」

 やわらかな微笑みで受け止める。宏臣は再びカップに手を伸ばした。
 温度まで計算された紅茶の香りが立ちのぼる。けれどもう、それだけでは満たされないことを宏臣は知ってしまっていた。