この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 「宏臣」

 母、凪子(なぎこ)の声に、思考を引き戻される。

 「話は聞いているわ。身代わりのお見合いだったそうじゃないの」

 彫りの深い優美な顔立ちをしているが、金縁の眼鏡の奥にある目は笑っていない。軽くパーマをかけてボリュームを出したショートヘアは、紫色がかっている。
 近頃ふくよかになってきたせいか、一見すると迫力のある容姿だ。カップをソーサーに戻す仕草には、隙ひとつない。

 「ええ。結果的にそうなりました」

 真っすぐに向けられた視線に、いつもの調子でやわらかく答える。
 日高から報告が入ったのだろう。

 「とんでもない娘だわ」

 母が間を置かず、断じる。予想通りすぎて、むしろ感心した。

 「そうでしょうか」

 否定も肯定もせず、曖昧に受け流す。

 「当然でしょう? 東城家との縁談に代理として現れるなんて、常識を疑うわ。三木家だってそうよ。向こうから頭を下げてきたからセッティングしたというのに、いったいどういうつもりなの」
 「事情はあったようです」
 「事情があれば、なにをしても許されると言うの!?」