この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 「帆奈美……」

 低く掠れた声が耳元で響く。名前を呼ばれるたび、胸の奥が甘く疼く。
 そのまま導かれ、口づけを交わしながら奥の部屋へと足を進めていく。その性急さが体の熱をさらに上げ、求め合う心に火をつける。
 唇を重ねたままよろけるように寝室のドアをくぐり、ふたりはベッドへ倒れ込んだ。

 宏臣の体が帆奈美を優しく押し包む形でシーツの上に沈む。背中に柔らかな感触が広がると同時に、彼の重みと熱が全身を覆った。

 「……本当に私と結婚を?」

 もう一度確認せずにはいられない。お互いの気持ちは確かめ合ったが、宏臣は好き嫌いで結婚を決められない世界で生きてきた。それを覆すのは容易でないはずだ。

 「とやかく言う人間はいるだろう。でも、俺の気持ちは変わらない。だから、帆奈美は俺の言葉だけを信じていればいい」
 「東城さんの言葉だけを……」

 その言葉は、迷いなく真っすぐに帆奈美の胸へと落ちてきた。
 不安も躊躇いも、まだ微かに残っているのに、それ以上に彼を信じたいという気持ちが静かに広がっていく。
 この人の隣にいたい。そう強く思ってしまった自分を、もうどうにも止められなかった。

 「ああ。わかったか?」