この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 無駄な装飾のない広いリビング。大きなガラス窓の向こうに広がる夜景。落ち着いた色調で統一された家具やインテリアの一つひとつが、さりげなく上質さを主張している。まるで、別世界に足を踏み入れてしまったみたいだった。

 言葉を失ったまま立ち尽くしていると、背後で静かにドアが閉まる音がした。
 次の瞬、後ろから強く抱きすくめられる。

 「……っ」

 息を呑む間もなく、腕に閉じ込められる。さっきまでふたりの間にあったはずの距離が、一瞬で消えた。
 肩口に触れる吐息が、やけに熱い。

 「帆奈美」

 囁くような声に答える余裕はなかった。体を反転させられ、視界が揺れる。
 気づけば壁際に追い込まれていて、逃げ場はどこにもない。
 視線が絡んだだけで、もうわかってしまう。次に起こることも、自分がそれを拒まないことも。

 ゆっくりと近づいてきた唇が重なった。
 今度はさっきよりも深く、逃がさないように。まるでこれまで抑えていたものを一気に解き放つように。

 背中が壁に押しつけられたまま、宏臣の体温が全身を包み込む。大きな手が腰を引き寄せ、ふたりの体がぴったりと重なり合う。息は苦しいのに、離れたくないという気持ちが勝って、帆奈美は彼のシャツの胸元をぎゅっと掴んだ。