帰りの車内も、どこか落ち着かない空気が続く。会話はいつも通り交わしているはずなのに、ふとした瞬間に視線が合うとさっきの感触が蘇り、帆奈美の鼓動を乱した。
どれくらい走ったのかも、よくわからない。気づけば車は、見慣れない地下駐車場へと滑り込んでいた。
広々とした空間に整然と並ぶ高級車。無機質なコンクリートの中にさえ、どこか洗練された空気が漂っている。
(ここ、どこ……?)
エンジンが止まり、静寂が落ちた。
「東城さん……?」
恐る恐る名前を呼ぶと、彼はハンドルに手をかけたまま、わずかに視線を寄越した。
「今夜は帰したくない」
甘さを滲ませた低い声が、帆奈美の胸を震わせる。心臓がどくんと大きく跳ねた。
戸惑いも躊躇いも、彼の熱を帯びた視線の前で霧散していく。ゆっくり息を吸い、小さく頷いた。
「……私も、帰りたくない」
帆奈美のそのひと言ですべてが決まったように、宏臣がドアを開けた。
エレベーターで上がり、案内された部屋は想像以上だった。



