この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 「それがなにか問題?」
 「え……」

 本気でわかっていない、という顔だった。

 「俺が結婚したいのは〝家〟じゃない。帆奈美、〝キミ〟だ。帆奈美じゃなきゃ意味がない」

 そう言いきって、繋いでいる手を引き寄せた。目が合ったまま動けない。今にも唇が触れそうで、熱烈な求愛に気が遠のきそうになる。

 「帆奈美の気持ちを聞かせてくれ」

 唐突に話を振られた。それも核心部分だ。
 今ここでのらりくらりとかわして逃げるのは、真剣に想いを打ち明けてくれた宏臣に失礼だし、帆奈美自身もそうしたくない。
 それに、本当はもう気づいていた。自分の気持ちがどうなのかを。

 「……好きです」

 言い終わるや否や、唇が重なった。
 静かな館内の空気の中で、ふたりの時間だけがゆっくりと流れる。

 (もう少しだけ、こうしていたい)

 自分はいったいどうしてしまったんだろうと思いながら、水槽から注ぐ青い光に包まれていた。
 結局そのあとは、まともに顔を上げることができないまま館内を歩いた。なにを見たのか、正直あまり覚えていない。
 ただ、繋がれた手の温もりと、ときおり向けられる視線だけが、やけに強く意識に残っていた。