この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 どこか呆れたようで、それでもわずかに優しさを含んだ声音だ。
 間近で見つめられていることに、耐えられなくなってくる。

 「……そんなに見ないでください」
 「なんで」
 「恥ずかしいから」

 視線を逸らそうとしても、うまく動かせない。
 冒頭の『初めて心から好きになった女性だから』という言葉から、ずっとペースを乱され通しだ。
 頬の熱は、さっきよりも確実に増している。水槽の青い光に照らされていなかったら、とっくにばれていたかもしれない。

 再びクスッと笑った宏臣に手を引かれ、順路に従い歩いていく。やがて小さな水槽がいくつも並ぶコーナーが現れた。カクレクマノミやネオンテトラなど、愛らしい熱帯魚たちがちょこちょこ動いている。
 そのうちのひとつの水槽の前で足を止める。チンアナゴがひょこっと顔を出し、ゆらゆらと揺れていた。

 「帆奈美」

 不意に名前を呼ばれ、彼を見る。いきなりの呼び捨てにドキッとし、さらに彼の顔がすぐそばにあったため、鼓動が大きく弾んだ。

 「……な、なんでしょうか」
 「結婚しよう」
 「だ、だけど私は良家の令嬢でも資産家の娘でもありませんから」

 宏臣の家柄にはとうてい釣り合わない。