この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 もっとよく見ようと身を乗り出したそのとき、額がコツンと水槽にぶつかった。小さな衝撃に、思わず「いたっ」と声が漏れる。

 「なにやってるんだよ」

 くすっと笑いを含んだ声が落ちてきた。
 顔を上げると、すぐ目の前に宏臣の顔がある。

 「だ、大丈夫です……!」

 反射的に答えたものの、鈍痛は額に残っている。

 「いや、全然大丈夫そうに見えないけど」

 そう言いながら、宏臣が少し身を屈めた。距離が一気に縮まる。

 (ち、近い……)

 思わず息を止める。逃げようとするよりも先に、繋がれたままの手がそれを許さなかった。

 宏臣の視線が、じっと帆奈美の額に向けられる。

 「赤くなってる」
 「え、嘘……」

 慌ててもう片方の手で額を押さえようとした瞬間、その手首を軽く掴まれ、代わりに彼の指先がそっと額に触れた。
 ぶつけた痛みよりも、心臓が跳ねた衝撃のほうが強い。ひんやりとした指の感触が、やけにくっきりと意識に残る。

 「夢中になりすぎ」