眠れなかった。
目を閉じるたびに思い出す。
池田屋。
血の匂い。
刀の音。
そして。
れなの血。
玄瑞は静かに目を開けた。
外はまだ暗い。
宿のみんなは眠っている。
だけど。
玄瑞だけは眠れない。
ここ数日ずっとそうだった。
胸が苦しい。
苦しくてたまらない。
縁側へ出る。
冷たい夜風が吹いていた。
それでも頭は冷えない。
池田屋の光景が離れない。
れなが飛び出した瞬間。
血が飛んだ瞬間。
全部覚えている。
「何してる」
声がした。
晋作だった。
酒を持っている。
玄瑞の隣へ座った。
いつもなら笑う。
いつもなら軽口も返す。
でも今日は違った。


