君がいた幕末で


その日の夜。

私は眠れなかった。

静かだった。

静かすぎた。

現代みたいに車の音もない。

テレビもない。

スマホも使えない。

急に寂しくなる。

お母さんに会いたい。

友達に会いたい。

帰りたい。

そう思った瞬間。

ぽろりと涙が零れた。

私は慌てて拭う。

泣かない。

泣いたらもっと寂しくなる。

私は空を見上げた。

綺麗な月だった。

そして。

小さく歌い始める。

大好きな歌を。

歌っている間だけは。

少しだけ寂しさを忘れられるから。

涙を隠すように。

夜空へ向かって歌った。

だけど。

その歌声を。

少し離れた場所で聞いている人がいた。

久坂玄瑞だった。