君がいた幕末で


「副長」

隊士が声を掛ける。

土方は我に返る。

「なんだ」

「どうかしましたか?」

土方は視線を逸らした。

「別に」

そう言って歩き出す。

だが。

頭から歌声が離れない。

その夜。

総司は一人で考えていた。

れなのこと。

笑う顔。

歌う姿。

帰りたいと呟く声。

そして。

久坂玄瑞の名前を口にする時の顔。

総司は小さく笑う。

「困ったな」

そう呟いた声は。

少しだけ寂しそうだった。