「ありえないんですよね」 総司が呟く。 平助が首を傾げる。 「何がだ」 「普通なら何か出る」 「でも出ない」 平助も黙る。 確かにおかしい。 れなという娘は。 不自然なくらい何もなかった。 その夜。 私は宿の庭にいた。 月が綺麗だった。 自然と歌を口ずさむ。 優しい歌。 少し寂しい歌。 その声を。 玄瑞は遠くから聞いていた。 何も言わない。 ただ聞いている。 それだけだった。