君がいた幕末で


私は思わず笑った。

「箱じゃないよ」

「ほう?」

「キャリーケース」

「きゃりーけーす?」

また知らない顔をする。

なんだか面白い。

私は取っ手を引っ張って見せた。

「旅行行く予定だったの」

「旅か」

晋作が頷く。

「着替えとか色々入ってる」

「全部そこか?」

「全部そこ」

晋作は感心したようにキャリーケースを見た。

「便利な世になったもんだな」

私は苦笑する。

便利すぎて。

逆に今が不便すぎる。

スマホも使えない。

電気もない。

コンビニもない。

そう思った瞬間。

急に不安になった。