君がいた幕末で


「れな?」

稔麿の声で我に返る。

私は慌てて笑った。

「なに?」

「いや」

稔麿は少し首を傾げる。

「今日は静かだな」

私は誤魔化すように笑った。

本当のことなんて言えない。

言えるはずがない。

その日の夕方。

私は一人で町を歩いていた。

町の人達が声を掛けてくれる。

「れなちゃん」

「歌は歌わんのかい?」

みんな笑顔だった。

優しい人達だった。

長州へ来たばかりの頃。

知らない世界だったはずなのに。

今は違う。

ここが好きだった。