「幼馴染じゃなくて、俺のこと、男としてどう思ってんの?」
駅前の街灯の下、ニヤニヤと意地悪そうに笑う湊。
ずるい。
今まで私の気持ちを散々振り回しておいて、付き合ってからもこうやって優位に立とうとするなんて。
だけど、私の手を握る湊の指先が、ほんの少しだけ震えていることに気づく。
……あぁ、なんだ。この人も、強がっているだけで本当は緊張しているんだ。
そう思うと、少しだけ勇気が湧いてきた。
私は繋いでいた手をぎゅっと強く握りしめ、一歩、湊との距離を詰める。
「……男として、でしょ?」
「お、おう……」
今度は湊の方が、私の突然の接近に面食らったように視線を泳がせた。
私はまっすぐに湊の目を見つめて、一文字ずつ、はっきりと口にする。
「大好きだよ。幼馴染としてじゃなくて、一人の男の子として、世界で一番、湊のことが好き」
「……っ」
湊の顔が、一瞬で耳の根元まで真っ赤に染まった。
片手で口元を覆い、バッと私から顔を背ける。
さっきまでの余裕そうな態度はどこへやら、完全にキャパオーバーを起こしている。
「な、何それ……。お前、そういうことサラッと言うなよ……」
「湊が言えって言ったんじゃん! なんで照れてるのよ!」
「照れてねぇわ! ……クソ、心臓に悪い……」
ぶつぶつと文句を言う湊の姿が、おかしくて、愛おしくて、私は思わずクスッと笑ってしまった。
いつも通りのやり取りのようだけど、中身は全然違う。
甘くて、少しくすぐったい、私たちの「新しいいつも通り」。
「……じゃあ、ノルマ達成。帰ろ?」
私が歩き出そうとすると、今度は湊にグイッと腕を引っぱられた。
気づけば、駅前の少し薄暗い柱の影に引き込まれていた。
「……まだ、終わってねぇ」
湊の声が、さっきよりも少し低くなる。
「好きって言わせたのは俺だけど、俺からも、ちゃんと言ってなかっただろ」
心臓が、ドクンと大きな音を立てた。
湊のまっすぐな瞳が、街灯の光を反射してキラキラと輝いている。
「陽菜。俺、お前以外の女子、本気でどうでもいいから。ずっと前から、お前だけが好きだった。これからは、他の誰にもお前の隣は渡さねぇよ」
その言葉は、夏祭りの夜の焦ったような告白よりも、ずっと深く、私の心の一番奥に染み込んできた。
嬉しくて、胸がいっぱいになって、また涙が出そうになる。
「……うん。私も、誰にも渡さない」
私たちがそう言い合った瞬間、駅前の喧騒が遠ざかっていくような錯覚に陥った。
湊の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
夕暮れの教室での、あの少し苦いキスの記憶を塗り替えるような、優しくて、ほんのり甘い、二人の本当の始まりのキス。
「……ん」
唇が離れたとき、湊は満足そうにふっと微笑んだ。
「よし。じゃあ、今度こそ帰るか。彼女さん」
「……もう、からかわないでよ、彼氏くん」
私たちはもう一度しっかりと手を繋ぎ、家路についた。
隣同士の家。いつもなら「じゃあね」とすぐに別れるはずの通学路の終わりが、今日だけは、なんだか名残惜しく感じられてしまう。
でも、明日も、明後日も、私たちは朝の駅前で会うのだ。
今度は「ただの幼馴染」としてではなく、「恋人」として。
こうして、私たちの新しい日常が、静かに幕を開けた。
……けれど、この時の私たちはまだ知らなかった。
美羽との一件が解決しても、私たちの前には、まだまだたくさんの「恋人としての壁」が立ちはだかっていることを。
駅前の街灯の下、ニヤニヤと意地悪そうに笑う湊。
ずるい。
今まで私の気持ちを散々振り回しておいて、付き合ってからもこうやって優位に立とうとするなんて。
だけど、私の手を握る湊の指先が、ほんの少しだけ震えていることに気づく。
……あぁ、なんだ。この人も、強がっているだけで本当は緊張しているんだ。
そう思うと、少しだけ勇気が湧いてきた。
私は繋いでいた手をぎゅっと強く握りしめ、一歩、湊との距離を詰める。
「……男として、でしょ?」
「お、おう……」
今度は湊の方が、私の突然の接近に面食らったように視線を泳がせた。
私はまっすぐに湊の目を見つめて、一文字ずつ、はっきりと口にする。
「大好きだよ。幼馴染としてじゃなくて、一人の男の子として、世界で一番、湊のことが好き」
「……っ」
湊の顔が、一瞬で耳の根元まで真っ赤に染まった。
片手で口元を覆い、バッと私から顔を背ける。
さっきまでの余裕そうな態度はどこへやら、完全にキャパオーバーを起こしている。
「な、何それ……。お前、そういうことサラッと言うなよ……」
「湊が言えって言ったんじゃん! なんで照れてるのよ!」
「照れてねぇわ! ……クソ、心臓に悪い……」
ぶつぶつと文句を言う湊の姿が、おかしくて、愛おしくて、私は思わずクスッと笑ってしまった。
いつも通りのやり取りのようだけど、中身は全然違う。
甘くて、少しくすぐったい、私たちの「新しいいつも通り」。
「……じゃあ、ノルマ達成。帰ろ?」
私が歩き出そうとすると、今度は湊にグイッと腕を引っぱられた。
気づけば、駅前の少し薄暗い柱の影に引き込まれていた。
「……まだ、終わってねぇ」
湊の声が、さっきよりも少し低くなる。
「好きって言わせたのは俺だけど、俺からも、ちゃんと言ってなかっただろ」
心臓が、ドクンと大きな音を立てた。
湊のまっすぐな瞳が、街灯の光を反射してキラキラと輝いている。
「陽菜。俺、お前以外の女子、本気でどうでもいいから。ずっと前から、お前だけが好きだった。これからは、他の誰にもお前の隣は渡さねぇよ」
その言葉は、夏祭りの夜の焦ったような告白よりも、ずっと深く、私の心の一番奥に染み込んできた。
嬉しくて、胸がいっぱいになって、また涙が出そうになる。
「……うん。私も、誰にも渡さない」
私たちがそう言い合った瞬間、駅前の喧騒が遠ざかっていくような錯覚に陥った。
湊の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
夕暮れの教室での、あの少し苦いキスの記憶を塗り替えるような、優しくて、ほんのり甘い、二人の本当の始まりのキス。
「……ん」
唇が離れたとき、湊は満足そうにふっと微笑んだ。
「よし。じゃあ、今度こそ帰るか。彼女さん」
「……もう、からかわないでよ、彼氏くん」
私たちはもう一度しっかりと手を繋ぎ、家路についた。
隣同士の家。いつもなら「じゃあね」とすぐに別れるはずの通学路の終わりが、今日だけは、なんだか名残惜しく感じられてしまう。
でも、明日も、明後日も、私たちは朝の駅前で会うのだ。
今度は「ただの幼馴染」としてではなく、「恋人」として。
こうして、私たちの新しい日常が、静かに幕を開けた。
……けれど、この時の私たちはまだ知らなかった。
美羽との一件が解決しても、私たちの前には、まだまだたくさんの「恋人としての壁」が立ちはだかっていることを。



