幼馴染に彼女ができたとき、私は貴方が好きだと気づいた。

放課後の教室に差し込む夕陽は、あの日と同じように、机の上に長い影を落としていた。
ただ一つ違うのは、私の隣に美羽ちゃんがいないこと。そして、私の手の中で淡く光るスマートフォンの画面。
何気なく開いたインスタグラムのタイムラインに、その投稿は流れてきた。
美羽ちゃんのアカウント。
少し前までは、お揃いのスニーカーを履いた足元の写真や、湊が不器用そうに笑う横顔の写真と一緒に、『私の彼氏。今日もかっこいいね』なんて、見ているこっちが恥ずかしくなるような、甘い言葉が並んでいた場所。
けれど、新しく更新された画面にあったのは、お気に入りのカフェの、ぽつんと一つだけ置かれたマグカップの写真だった。

@miu_0412

いつも応援してくれてたみんなへ。
私たちは、別れることになりました。
突然の報告でびっくりさせちゃってごめんね。
湊くんとは、お互い話し合って、別々の道を歩むことになりました。
付き合って半年の記念日を迎えたばかりだったけど、お互いの未来のための前向きな決別です。
湊くんと過ごした時間は、本当に宝物でした。
これからは、一番の応援団として、お互いがんばります!
これまで二人を見守ってくれて、本当にありがとうございました。

スクロールする指が、ぴたりと止まる。
夕陽の赤い光が画面に反射して、文字がにじんで見えた。
「付き合って半年」
――短いような、私にとっては永遠のように長かった、二人の時間。
美羽ちゃんらしい、誰も傷つけないように配慮された、どこか健気で前向きな文章。
でも、だからこそ、その裏にある寂しさが画面越しに伝わってくるようで、胸の奥がキュッと締め付けられた。
あんなに私の腕に絡みついて、「湊くんより陽菜ちゃんが大好き!」って無邪気に笑っていた美羽ちゃん。
あんなに幸せそうに、美羽ちゃんのリップの色を気にしてキスをしていた湊。
二人の恋が、終わった。
「……嘘、でしょ」
静まり返った教室に、私の小さな呟きだけが虚しく響く。
ずっと羨ましくて、切なくて、直視できなかった二人のきらめきが、あっけなく過去のものになってしまった。
画面を閉じて、スマホを机に置く。
窓から吹き込んできた少し冷たい夕風が、私の髪を揺らした。
湊がフリーになった。
その事実に、私の心臓はまた、嫌な生き物のようにドクンと大きく波打つ。
だけどそこに湧き上がってきたのは、喜びなんかじゃなくて、どうしようもない戸惑いと、切なさだった。
幼馴染としての『特等席』を失ったあの日から、半年。
世界がまた、音を立てて動き出そうとしていた。