幼馴染に彼女ができたとき、私は貴方が好きだと気づいた。

オレンジ色の光が、誰もいない放課後の教室を静かに侵食していく。
窓際の一列。傾いた夕陽が机の上の傷や、使い古された椅子の背もたれを赤黒く浮かび上がらせ、長い、長い影を廊下側へと引き延ばしていた。
昼間の喧騒が嘘のように静まり返った空間で、空気中に漂う微細なホコリが、差し込む光の帯の中でキラキラと金粉のように踊っている。
窓の外からは、遠くのグラウンドで響く部活の掛け声や、どこか遠い街のノイズが、まるで薄い膜を隔てたかのように微かに届くだけ。
引き違いの窓がほんの少しだけ開いていて、そこから入り込む夕方の生ぬるい風が、掲示板のプリントをパタパタと切なく揺らした。
カーテンが風に膨らむたび、教室の中の光と影がゆらゆらと波打つ。
「陽菜ちゃん! あのね……相談にのってほしいんだけど、いま、いいかな?」
後ろから美羽ちゃんの声が聞こえた。
「美羽ちゃん! どうしたの? 相談、聞くよー!」
美羽ちゃんは私の前の席の人の椅子に座って、私の方を見た。
「ねえ陽菜ちゃん。もし好きな人に、もっと好きな人がいたらどうする?」
……え。それって……。
「私ね、好きな人に好きな人がいたの。だから、陽菜ちゃんだったらどうするかなって気になって……」
「え……あ、そ……その……」
「陽菜ちゃんだったら、どうするの?」
私だったら……。
「奪う……かな?」
「う、奪う……?」
「奪うって言うよりかは、ずっと好きでいる……かな?」
「叶わないとしても?」
「うん。だって、好きなんでしょ? 辛くてもずっと好きでいたい……な」
「へぇ~、そっか。ありがとう!」
「あ、うん」
あ、ありがとう……???
「あ、ここにいた! 美羽、一緒に変えろー! この前行きたいて言ってたカフェ行かね?」
教室の後ろから湊の声が聞こえた。
あ……。また分かってしまった。
もう、湊は美羽ちゃんのなんだって。
湊は私のものじゃないんだって……。
美羽ちゃんは嬉しそうに湊のもとに行く。
「じゃあ、またね! 陽菜ちゃん」
手を振ってくれたので、手を振り返した。
私はどうしたらいいの?
私を大好きだと言ってくれる友達の彼氏を好き。
叶わなくたって、好きでいればいいの?
それとも……、諦めるべき?
好きでいたら美羽ちゃんに迷惑かけることは分かる。
十分わかってる。
だけど、好きが止められない……。
好きじゃないなんて考えられない……。
私は湊を好きじゃなくなったら、どうなるんだろう……。

好きになって、ごめんなさい……。
美羽ちゃん、湊。