「俺の今の気持ち、分かったような言い方しないでくれよ」
自分でも驚くくらい、とげとげしい声だった。
「え……」
「〝リハビリ頑張れば〟とか、〝またバスケは〟とか。簡単に言うけどさ」
胸の奥に溜まっていたものが、
どろどろと溢れ出す。
「バスケに全部かけてきた人間にとって、〝夏に間に合わないかもしれない〟って、どれくらい残酷なことか分かる?」
彼女は、
何か言おうとして口を開きかけて、閉じた。
「入学したときからさ、〝三年の夏が最後〟って、それだけ目指してきたのに」
体育館の朝練。
真冬のナイター。
休日返上の遠征。
全部、『夏の大会』の一点に向かっていた。
「それが〝間に合わないほうがいい〟って言われて」
笑おうとしても、うまくいかなかった。
「〝別のところに全力向けろ〟って、急に言われてさ」
それは、たしかに正しい提案だ。
現実的で、前向きな選択肢。
頭では分かっている。
でも。
「そんな簡単にスイッチ切り替えられたら、苦労してねぇよ」
声が震えた。
山谷さんは、
膝の上でぎゅっと拳を握りしめていた。
何も言わない。
だから、余計に腹が立った。


