◇
「そういえばさ」
ひと段落したところで、春日井先輩が言う。
「美由紀から聞いたよ。〝歩実ちゃんが見舞い行きたいってウロウロしてた〟って」
「ウロウロ……」
あの職員室前や保健室前を二往復してたこと、
しっかり話を聞いているっぽい。
「ごめんなさい。なんか、ストーカーみたいで」
「いや、全然。むしろ、そんなふうに気にしてもらえるほうが、ありがたいっていうか」
春日井先輩は、
少しだけ目を伏せてから続けた。
「正直さ。倒れたとき、〝あ、これ人生終わったかも〟ってちょっと思ったんだよね」
「終わった……?」
「バスケとか、高校生活とか、いろいろ」
あの鈍い音。
担架。
天井を見上げる横顔。
「でも、こうやってさ」
春日井先輩は、ベッドの柵を指で軽く叩く。
「病院のベッドで、〝図書室でCDの話した一年生〟が来てくれるって、想定してなかったから」
「……私も、想定してなかったです」
病院の白いシーツの上で話すことになるなんて、
想像もしなかった。
「だから、なんか、〝終わった〟って感じじゃなくなった」
彼は、少し照れくさそうに笑う。
「ちゃんと〝続き〟があるんだと思えた」
その言葉に、胸の奥があたたかくなる。


