◇
病室は、四人部屋のいちばん窓際だった。
カーテンを少しだけ閉めて、
簡易的な半個室みたいになっている。
「どうぞ」
ベッド脇の椅子を指さされ、
私は鞄を足元に置いた。
窓の外には、小さな公園と駐車場。
遠くに、川のきらめきが見える。
「足……」
言いかけて、言葉を飲み込む。
左足首からふくらはぎにかけて、
しっかりと固定具がついている。
「うん」
彼が先に言った。
「派手にいった。骨にヒビと、靭帯ブチッと」
「ブチッと……」
「医者はもうちょっとマシな言い方してたけど」
肩をすくめて笑う。
「でも、ちゃんと治せばバスケできるって。前と全く同じにはならないかもしれないけど、バスケもできる可能性はあるって」
「……よかった」
心の底から出た声だった。
「まだ〝よかった〟って言うには、正式な結果出てないんだけどね」
そう言いながらも、
彼の目は少しだけ前を向いていた。
「リハビリ、きついですか」
「まあ、それなりに」
ベッドの端を軽く叩く。
「さっきも、ゴムバンド引っ張りながら、〝何やってんだ俺〟ってちょっと笑いそうになった」
「笑いそうに?」
「うん。体育館で走りまわってたやつがさ、今はここで地味に足上げ下げしてるのかって」
そこには、
自分を少し俯瞰して見るような視線があった。
「でもさ」
彼は、窓のほうを一瞬見てから、
こっちに視線を戻した。


