「もし、よかったらなんだけど」
美由紀さんは、
ポニーテールを指で結び直しながら言う。
「お見舞い、行ってあげてくれない?」
「えっ、いんですか?」
予想していなかった言葉に、目を瞬く。
「もちろん。私、週に何回か病院行ってるけどさ。友達が来てくれたほうが、温人のメンタルには絶対いいと思う」
「友達……ですか」
その単語が、少し胸に刺さる。
私は、
自分を『友達』と名乗っていいのか分からない。
「図書室で話してたんでしょ。〝雨宿りの時間〟の」
美由紀さんが、少しイタズラっぽく笑う。
「温人から聞いた」
「え……」
「〝同じアルバム好きな一年がいるんだよね〟って。なんか嬉しそうに」
その光景を想像しただけで、
心臓が騒がしくなる。
「だから、歩実ちゃんなら、今の温人と〝バスケ以外〟の話がちゃんとできるかなって。それに、怪我したばっかでバスケのこと一旦忘れさしたいしね」
「……」
迷子みたいになっていた気持ちに、
ひとつ道が引かれた気がした。
「病院、どこですか」
気づいたら、そう口にしていた。
美由紀さんは、少しだけ口角を上げる。
「教えるよ。歩実ちゃんが行くって言ったら、たぶん温人、変な顔すると思うけど」
「変な顔?」
「嬉しいくせに、平然装おうとする顔」
それを想像したら、少しだけ笑えた。


