君が照らす人生は、いつだって温かい




体育館の匂いは、なんだか懐かしい。

スニーカーのゴムと、
ワックスの床と、人の汗と。

中学のとき、
バレー部の友達の応援で何度か来た匂いと、
ほとんど同じなのに。

胸の奥のざわざわだけが、
あの頃とは違っていた。



「お、もう始まってる」



二階席から見下ろすと、
白と青のユニフォームがコートの上を走り回っている。

ボールをつく音、
シューズが床をこする音、
笛の鋭い音。

視線の行き先を持て余していたとき、
ひときわ目立つ背番号が目に入った。

四番。

黒髪を短く刈り込んだ、背の高い男の人。

切り返しのたびに、床が少しだけ揺れた気がする。



「あれが、うちのアイドルですよ」



隣で、瑠奈がひそひそ声で囁く。



「春日井《かすがい》温人《はると》先輩。二年でエース。女子に人気。男子にも人気。先生にも人気。動物にも人気」



「人気の塊じゃん」



「そう。人気と才能の塊」



たしかに、動きに目が吸い寄せられる。

ボールを持つと、一瞬だけ周りを見回して、
すぐに最善の選択をしているのが分かる。

自分で切り込むときもあれば、
ノールックで味方にパスを通すときもある。

シュートがリングを通るたびに、
体育館の空気が少しだけ熱くなる。



「……すごい」



思わず、声が漏れていた。

すごい、という言葉は、あまりにも薄っぺらい。

でも、今の私にはそれくらいしか語彙力がない。