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その日の放課後。
私は、
また体育館のある方向を無意識に見ていた。
と、そのとき。
「歩実ちゃん、だよね」
背後から、不意に声をかけられる。
振り向くと、
ポニーテールを揺らした女子が立っていた。
バスケ部のマネージャー、
夏目美由紀。
試合の時、
真っ先に春日井先輩に駆け寄った人。
「あ、はい」
名前を呼ばれた驚きで、
返事が一拍遅れる。
「この前の試合、見てたよね?」
「……はい」
二階席から見下ろす視界。
倒れた音。
白いテーピング。
全部、まだ鮮明だった。
「ありがと」
美由紀さんは、あっさりそう言った。
「こういうこと言うと変だけど、見ててくれる人がいるの、ありがたいから」
「いえ、そんな」
「それでさ」
美由紀さんは、
少しだけ言い淀んでから続けた。
「ひとつ、聞いていい?」
「はい」
「温人のこと、心配してる?」
真正面から言われて、
喉の奥がきゅっと締まる。
美由紀さんと春日井先輩の関係性を知りながらも、
私は嘘はつけなかった。


