試合の翌日から、
学校の空気が少しだけざらついていた。
「春日井先輩、やっぱり結構やばかったらしいよ」
「骨折れたとか、筋切ったとか、なんかいろいろ説ある」
「このまま引退とか、ないよね……」
廊下ですれ違うたび、
誰かが『春日井』の名前を出している。
でも、
そのどれもが『らしい』『とか』で終わる噂話で、
本当のことは何ひとつ分からなかった。
教室の窓から見える体育館の屋根が、
いつもより遠く見える。
「歩実、大丈夫?」
休み時間、
ノートをぼんやり眺めていた私に、
瑠奈が声をかけてきた。
「なにが?」
「顔。なんか、ずっと体育館の方向いてるよ」
「……向いてた?」
「うん。授業中もずっと」
言われてみれば、
黒板の上の時計の先にあるものばかり見ていた気がする。
「そっか」
「そっか、じゃなくてさ」
瑠奈は、椅子の背にもたれかかりながら続ける。
「会いたいなら、会いに行けばいいのに」
「え?」
「保健室とか、職員室前とかうろちょろしてないでさ」
図星を刺されて、言葉に詰まる。


