君が照らす人生は、いつだって温かい


◇

試合が終わったあとも、
しばらく席を立てなかった。

勝ったのか、負けたのか。

スコアは目に入っていたはずなのに、
頭には残っていない。

ただ、
床に残った白いテーピングの切れ端だけが、
妙にはっきり見えた。



「歩実、帰ろっか」



瑠奈の声に、やっと我に返る。



「あ……うん」



立ち上がろうとして、
足元が少しふらついた。

手すりを握って、深呼吸をする。

胸の奥に溜まった何かは、
言葉にならないまま、そこに居座り続けていた。

体育館を出るとき、一度だけ振り返る。

さっきまで歓声で満たされていた空間が、
少しずつ片付けられていく。

誰も、転んだ音のことなんて、
覚えていないかもしれない。

でも、私は、たぶん一生忘れない。

あの鈍い音と、一緒に聞こえた歓声と。

そして、そのあとに続いた静けさを。



「……また、私は声を出せなかった」



帰り道、
誰にも聞こえないくらい小さな声で、
そう呟いた。

その言葉だけが、
今日の自分への判定みたいに、
胸の中でいつまでも響いていた。