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試合が終わったあとも、
しばらく席を立てなかった。
勝ったのか、負けたのか。
スコアは目に入っていたはずなのに、
頭には残っていない。
ただ、
床に残った白いテーピングの切れ端だけが、
妙にはっきり見えた。
「歩実、帰ろっか」
瑠奈の声に、やっと我に返る。
「あ……うん」
立ち上がろうとして、
足元が少しふらついた。
手すりを握って、深呼吸をする。
胸の奥に溜まった何かは、
言葉にならないまま、そこに居座り続けていた。
体育館を出るとき、一度だけ振り返る。
さっきまで歓声で満たされていた空間が、
少しずつ片付けられていく。
誰も、転んだ音のことなんて、
覚えていないかもしれない。
でも、私は、たぶん一生忘れない。
あの鈍い音と、一緒に聞こえた歓声と。
そして、そのあとに続いた静けさを。
「……また、私は声を出せなかった」
帰り道、
誰にも聞こえないくらい小さな声で、
そう呟いた。
その言葉だけが、
今日の自分への判定みたいに、
胸の中でいつまでも響いていた。


