「行った……!」
ドリブルの音が、床を叩く。
鋭いクロスオーバーで一人目を抜く。
さらに緩急をつけたドリブルで二人目をずらす。
ペイントエリアに踏み込んだ瞬間、
右足で強く床を蹴った。
大きくジャンプ。
空中でディフェンスの手をかわして、
ダブルクラッチでレイアップのフォームに入る。
ボールが、指先を離れる。
時間が、少しだけ遅くなった。
シュートは、
きれいな弧を描いてリングに向かう。
――入れ。
誰もがそう思った。
実際、ボールはリングに当たって、
そのままネットを揺らした。
歓声が、爆発する。
でも、その歓声の中に、別の音が紛れ込んだ。
ドン、と鈍い音。
春日井先輩の体が、バランスを崩して、
横から激しく倒れ込んだ。
左足首が、
床にいやな角度でねじれるのが見えてしまった。
「あっ――」
声が、喉の奥で引っかかる。
その場でうずくまったまま、
彼はしばらく起き上がれなかった。
体育館の音が、一瞬で薄くなる。
ボールの音も、
シューズのきしむ音も、全部遠くなる。
「タイム!タイム!」
コーチの叫びが響く。
笛の音。
ベンチから誰かが飛び出す。


