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第三クォーターの途中で、
体育館の空気が変わった。
「春日井、行くぞ」
コーチの声が、
はっきり聞こえた気がした。
ベンチでジャージを脱ぐ動きが、
視界の端に入る。
「来た」
瑠奈が、小さく呟く。
春日井先輩が、
チェックインの笛とともにコートに入る。
左足首のテーピングが、
シューズの間からちらりと見えた。
走るたびに、その白が床をかすめる。
最初の数プレーは、見ていて怖かった。
一歩ごとに、
足首が悲鳴を上げているんじゃないかと想像してしまう。
でも、彼はそんなそぶりを見せなかった。
いつもより少しだけスピードを抑えているように見えるけど、
ボールを持った瞬間のキレは変わらない。
ドライブイン。
ステップバック。
ノールックパス。
会場のざわめきが、一段高くなる。
「やっぱ、すご……」
言いかけて、飲み込む。
『すごい』に、
『無理はしないで』が混ざってしまいそうだったから。


