春日井先輩は、 ベンチから立ち上がって、 コートのほうをじっと見ていた。 腕を組んで。 ときどき仲間に声をかけて。 でも、自分は出ない。 それが、見ていて苦しかった。 あの人は、コートの上で走っている人だ。 ボールを持ってないときですら、 どこかに走る準備をしている人だ。 ベンチに縫いとめられているみたいなその姿は、 見慣れない刺繍のように、 そこだけ浮いて見えた。 「歩実、顔こわいよ」 「えっ」 「眉間に、しわ寄ってる」 「……無意識に」 笑おうとしても、うまく笑えなかった。