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その夜、家の物置きの奥底に、
ギターケースがあることを思い出し、
それを取り出した。
中学のとき、
父親がギター始めるとか言い出して、
Fコードで心を折られたやつ。
ケースのファスナーを開けると、
少しほこりっぽい匂いがする。
弦を一本、軽くはじいてみる。
びーん、と心もとない音。
「……文化祭、か」
自分の声が、部屋の中に溶ける。
体育館のコートと、舞台の上。
バッシュと、ギター。
まだ、両方やるかなんて決められない。
でも、足首に当てた保冷剤の冷たさと、
指先に残る弦の振動。
その両方が、同じくらい現実だった。
デスクのカレンダーに目をやる。
赤ペンで丸をつけた日付。
『打倒南陵』。
キャプテンが『ここ勝てば一気に注目される』と言った試合の日。
それが、
今の自分の『目標』であり、通過点。
そこまで、この足はもつのか。
その日、
自分はコートに立っているのか。
まだ分からない予感だけが、
静かに広がっていった。


