「秋の文化祭、ね」
「ああ、あれか。クラス合唱とかの」
「それだけじゃなくて、有志ステージもあるじゃん」
たしかに、
去年のパンフレットにも書いてあった。
バンドとか、ダンスとか、ソロ弾き語りとか。
「何が言いたいかというと」
美由紀は、軽く和音を鳴らす。
Cのコード。
音楽室に、シンプルな響きが広がる。
「誰かが、この曲をステージでやってくれたら、絶対かっこいいと思う」
「誰かって誰よ?」
「あなたしかいないでしょ」
即答。
「俺ぇ?いや、待って」
「待たない」
「俺、楽器とか触ったことないし」
「大丈夫、ドラムは私がやるから」
あまりに当然みたいに言われて、言葉を失う。
「あなたは歌う専門。私、ずっと軽音学部だけど、ドラムもそこそこはできるし」
そう言って、
イントロのメロディーをさらっと弾いてみせた。
CDで何度も聴いたフレーズが、
目の前の鍵盤からそのまま出てくる。


