「じゃあ……『はい、消しゴム』」
瑠奈がわざとらしく言う。
「えっと……どうぞ?」
「それ貸す側な。今はあんたが借りる側でしょ」
「あ、そっか」
「もっかい。〝はい、消しゴム〟」
「ありがとう。助かる」
「はい、合格〜」
大げさに拍手される。
「ほら、言えんじゃん。〝ごめん〟以外」
「……まあ、言わされた感あるけど一応」
「だからさ。家でもそれ使ってみなよ」
「家で?」
「うん。なんか言われたとき、
〝ごめんなさい〟より先に〝ありがとう〟探すの」
そんなの、簡単じゃない。
頭の中に浮かぶ言葉は、いつも決まっている。
ごめんなさい。
大丈夫です。
私なんか。
「……考えとく」
「それ絶対やらないやつ」
図星すぎて、パンの味がよく分からなくなった。


