「サビ前の『今日もちゃんと』のところ、めっちゃよかったよ」
「ひ、ひどかったと思いますけど……」
「なんで自分で先にディスるの」
苦笑いしながら、少しだけ距離を詰めてくる。
机一つ分くらい。
「俺さ」
急に真面目な声になった。
「最初、〝雨宿り〟聴いたとき、あの曲で結構救われたんだよね」
「救われた?」
「うん。中一のときとか、部活で全然うまくいかなくて、コーチにも先輩にも怒られまくっててさ。『もうやめようかな』って何回も思ったことがある」
体育館で見た、
あの完璧なプレーからは想像できない話だった。
「でも、帰り道であの曲聴いて、〝今日もちゃんとここにいたな〟って、自分に言い聞かせてた」
言葉を選ぶように、ゆっくり話す。
「試合に出られなくても、怒られてばっかでも、とりあえず今日一日サボらずに行ったなら、それでギリギリ合格ってことでって」
その言い方が、あの夜の言葉と重なる。
「……それ、私も、ちょっと似てます」
「似てる?」
「中三の冬、勉強うまくいかなくて、ぜんぶ投げ出したくなったときがあって」
川沿いの柵。
冷たい風。
自分の足のふらつき。
その光景が、頭の中で一瞬よみがえる。
でも、ここでは細かくは言わない。
「でも、誰かに〝今日まで生きてきたのに〟って言われて。それで、なんか……」
途中で言葉が詰まる。
春日井先輩は、静かに頷いた。


