君が照らす人生は、いつだって温かい


◇

放課後、
教室のざわめきがすっかり消えた時間。

部活のない私は、
まっすぐ帰るか、図書室に寄るか、
いつも廊下の途中で迷う。

今日は、どちらも選ばなかった。

音楽室に行くには、少し勇気がいる。

グランドピアノと、楽譜立てと、
仕舞いきれない譜面台のにおい。

誰もいない音楽室は、
逆に静かすぎて、ちょっと怖い。

だから、
私は二年生の教室が並ぶフロアの、
端っこ近くにある空き教室に向かった。

『使用禁止』という札は出ていない。

でも、
誰も使っていないことを、私は知っていた。

廊下の角を曲がる。

窓から射し込む西日が、
床に長い影を落としている。

空き教室のドアノブを、そっと回した。

かちゃ、と金属の小さな音。

ドアを細く開けて、中を覗く。

誰もいない。

黒板と、整然と並んだ机。

窓際のカーテンが、ゆっくりと揺れている。

私は中に入り、ドアを静かに閉めた。

鍵はかけない。

でも、
心の中で『ここは一人だけの部屋』と決める。

鞄から、
例のCDプレーヤーとイヤホンを取り出した。

昨日まで、部屋でしか聴かなかった音楽。

それを、
学校で聴くのは少しだけ背徳感がある。

机の上にCDプレーヤーを置き、
イヤホンを耳に差し込む。

再生ボタンを押す。


――雨音みたいなギターが、
鼓膜のすぐそばで鳴り出した。