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放課後、
教室のざわめきがすっかり消えた時間。
部活のない私は、
まっすぐ帰るか、図書室に寄るか、
いつも廊下の途中で迷う。
今日は、どちらも選ばなかった。
音楽室に行くには、少し勇気がいる。
グランドピアノと、楽譜立てと、
仕舞いきれない譜面台のにおい。
誰もいない音楽室は、
逆に静かすぎて、ちょっと怖い。
だから、
私は二年生の教室が並ぶフロアの、
端っこ近くにある空き教室に向かった。
『使用禁止』という札は出ていない。
でも、
誰も使っていないことを、私は知っていた。
廊下の角を曲がる。
窓から射し込む西日が、
床に長い影を落としている。
空き教室のドアノブを、そっと回した。
かちゃ、と金属の小さな音。
ドアを細く開けて、中を覗く。
誰もいない。
黒板と、整然と並んだ机。
窓際のカーテンが、ゆっくりと揺れている。
私は中に入り、ドアを静かに閉めた。
鍵はかけない。
でも、
心の中で『ここは一人だけの部屋』と決める。
鞄から、
例のCDプレーヤーとイヤホンを取り出した。
昨日まで、部屋でしか聴かなかった音楽。
それを、
学校で聴くのは少しだけ背徳感がある。
机の上にCDプレーヤーを置き、
イヤホンを耳に差し込む。
再生ボタンを押す。
――雨音みたいなギターが、
鼓膜のすぐそばで鳴り出した。


