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試合が終わったのは、一時間後だった。
結果は、65対61。
うちの高校の勝ち。
「やばい、最後のスリーしびれたね!」
「ね、あれはアニメかと思った」
観客席がざわざわしている中、
瑠奈が興奮気味に言う。
私も、
手のひらに汗をびっしょりかきながら、
拍手を送っていた。
最後の数分は、
ほとんど呼吸を忘れていた気がする。
「春日井先輩、二十八得点だって」
誰かが、スコア表を覗き込んで叫ぶ。
「あの人、一人で試合壊すよなー」
誰かの感想に、思わずうなずきそうになる。
でも、その『壊す』は、悪い意味じゃない。
退屈な試合を、ぐちゃっとかき混ぜて、
新しい形に変えてしまう人。
「ねえ」
体育館を出るとき、
瑠奈が少しだけ真面目な声で言った。
「また見に来ようよ」
「……うん」
あっさり同意している自分に、少し驚く。
昨日までの私なら、
『勉強が』とか『親が』とか、
何かしら理由をつけていたはずだ。
「なんかさ」
瑠奈は、
靴のかかとをコツコツ鳴らしながら、続ける。
「上から見てるだけでも、ちょっと元気出るんだよね。ああやって全力で走ってる人達見ると」
「うん。分かる」
あの夜の川沿いで、
暗闇に沈もうとしていた自分とは違う。
今は、
少なくとも誰かが全力で走っている場所に、
自分の体を運べている。
それだけで、少しだけ誇らしい。


