タイムアウトの笛が鳴って、
選手たちがベンチに戻る。
春日井先輩はタオルで汗を拭きながら、
水を飲んでいる。
その隣には、マネージャーらしき女の人が、
スポーツドリンクのボトルを配っていた。
細い三つ編み。
きびきびした動き。
夏目《なつめ》美由紀《みゆき》。
同じ中学で、
春日井先輩と同い年の話したこともない人。
「夏目さんって、軽音学部だよね」
思わず声に出すと、
瑠奈が「そうそう」とうなずいた。
「今はバスケ部のマネージャーも兼任しているらしいよ。学業も部活も両立できてるから、先生にもコーチにも熱い信頼があるって聞いた」
「なんか、似合うね」
「似合う。完璧感あるよね」
タオルを渡す手つきも、メモを取る姿勢も、
ひとつひとつが迷いなくて。
義母を見ているときと同じ種類の『隙のなさ』を感じた。
私は、
机の端に筆箱を斜めに置いてしまうタイプだ。
朝ごはんのとき、
お椀の向きがずれてないか気にしてしまう義母とは、たぶん違う星の住人。
夏目さんも、きっと義母の側の人だ。
『ちゃんとしている人』の側。


