「なに、イケメンと立ち話してんの」
「い、イケメンって」
「いや、どう見てもそうでしょ。春日井先輩だよね、今の。知り合いだったの?」
「いや……」
「中学違うからちゃんとは知らないけど、顔と名前と背番号くらいは全国民必修科目だよ」
そんな教科は聞いたことがない。
「で、何話してたの?」
「CDのこと、とか。バスケのこと、とか」
「へえ〜」
瑠奈の興味津々な目が、
じりじりと近づいてくる。
「で、〝好きな曲また教えてよ〟とか言われちゃったり?」
「……なんで分かるの」
「それ、完全にフラグだからね?」
「フラグって言うのやめて」
「いいじゃん別に。物語的にはおいしい展開だよ」
私は、
さっき買ったばかりのCDをぎゅっと抱きしめた。
「でも、なんか……」
「なんか?」
「同じもの好きな人がいるって、こんなに心強いんだなって」
胸の奥に、
少しだけあたたかいものが広がる。
「でしょ。世界に一人でも〝分かる〟って言ってくれる人がいると、〝私なんか〟って気持ちがちょっと減るから」
瑠奈は、さらっと核心を突いてくる。
「……私なんか、って言いそうになったとき、どうすればいいの?」
「〝私だから〟に変換」
「簡単に言うね」
「簡単にはできないけどね。でも、その練習に音楽はちょうどいいよ」
『私なんかが聴いても』と思う代わりに。
『私だから聴けるやつ』を探す。
そんなふうに、
自分を少しずつ許していく方法が、
どこかにあるのかもしれない。


