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レジで会計を済ませて戻ると、
春日井先輩はまだ同じ場所に立っていた。
「買えました」
「おめでとう、〝雨宿りデビュー〟」
冗談めかして言う。
「今度、天気悪い日にでも聴いてみてよ。傘さして歩きながら」
「そこ、雨の日限定なんですね」
「晴れた日に聞きたいなら、ちゃんとさして歩くの前提ね」
二人でふっと笑う。
こんなふうに誰かと自然に笑い合うのは、
いつ以来だろう。
家では、
笑うタイミングをいつも逃してしまう。
中学の友達とは、
進路がバラバラになってから少し距離ができてしまった。
高校に入ってからも、
クラスでこんなふうに話す相手は、
今のところ瑠奈くらいだ。
「じゃあ俺、そろそろ帰るわ」
春日井先輩が、鞄の位置を直しながら言う。
「明日も朝練あるし」
「お疲れさまです」
「山谷さんも、テスト勉強がんばって」
「……はい」
条件反射で『がんばります』と言いそうになって、
慌てて飲み込む。
代わりに、
『ありがとうございます』とだけ付け足した。
「うん。また学校で」
「また」
店を出ていく背中は、
体育館で見たときと同じようにまっすぐだった。
自動ドアが閉まる音がして、
店内のBGMが少しだけ大きくなる。
そのタイミングで、
瑠奈が別の棚からひょこっと顔を出した。


