君が照らす人生は、いつだって温かい


◇

レジで会計を済ませて戻ると、
春日井先輩はまだ同じ場所に立っていた。



「買えました」



「おめでとう、〝雨宿りデビュー〟」



冗談めかして言う。



「今度、天気悪い日にでも聴いてみてよ。傘さして歩きながら」



「そこ、雨の日限定なんですね」



「晴れた日に聞きたいなら、ちゃんとさして歩くの前提ね」



二人でふっと笑う。

こんなふうに誰かと自然に笑い合うのは、
いつ以来だろう。

家では、
笑うタイミングをいつも逃してしまう。

中学の友達とは、
進路がバラバラになってから少し距離ができてしまった。

高校に入ってからも、
クラスでこんなふうに話す相手は、
今のところ瑠奈くらいだ。



「じゃあ俺、そろそろ帰るわ」



春日井先輩が、鞄の位置を直しながら言う。



「明日も朝練あるし」



「お疲れさまです」



「山谷さんも、テスト勉強がんばって」



「……はい」



条件反射で『がんばります』と言いそうになって、
慌てて飲み込む。

代わりに、
『ありがとうございます』とだけ付け足した。



「うん。また学校で」



「また」



店を出ていく背中は、
体育館で見たときと同じようにまっすぐだった。

自動ドアが閉まる音がして、
店内のBGMが少しだけ大きくなる。

そのタイミングで、
瑠奈が別の棚からひょこっと顔を出した。