「昨日、体育館で、バスケ見ました」
話題が飛んだ。
でも、今言わないと、
二度とチャンスがない気がした。
春日井先輩が、少し驚いた顔をする。
「二階席のほう?」
「はい。友達と。……すごかったです」
「ありがと」
照れくさそうに頭をかく。
「でも、そんなこと言ってくれる人、あんまりいないんだよね」
「え、そうなんですか」
「〝シュートやばかった〟とか〝エグかった〟とかはあるけどさ。〝すごかったです〟って、なんか真面目に褒められてる感じする」
「そ、そうですか?」
「うん。なんか、ちゃんと見てくれてたんだなって」
『ちゃんと見てくれてた』。
その言葉が、胸のどこかにひっかかった。
あの夜、柵の前で俯いていた自分を、
『ちゃんと見てくれてた』人がいた。
昨日、体育館でボールを追っていた彼を、
『ちゃんと見ていた』自分がいた。
その両方が、
今ここで同じCDを挟んで向き合っている。
「このアーティスト、他にも好きな曲ある?」
春日井先輩が、少し身を乗り出して聞いてくる。
「えっと……新しいほうは三曲目を聴きました。タイトル、たしか……」
記憶をたぐる。


