君が照らす人生は、いつだって温かい




「歩実《あゆみ》、おはよう」



キッチンから、少し低めの女の人の声がする。



「……おはようございます」



条件反射みたいに、敬語が出た。

義母の背中は、いつもどおりきちんとしている。

寝癖ひとつないポニーテール。

アイロンの線がまっすぐなエプロン。

まな板の上で、きゅっ、きゅっ、
ときゅうりが同じ厚さで並んでいく。

その規則正しいリズムを聞いていると、
自分の呼吸まで乱れているような気がしてきた。



「ご飯よそってくれる?」



「あ、はい」



炊飯器のふたを開けると、
湯気がふわっと顔にかかった。

しゃもじで白いご飯をよそう。

茶碗のふちを、途中で一度拭う。

こういう小さいところで、
『だらしない』と思われたくない。

テーブルには、
焼き鮭、卵焼き、ほうれん草のおひたし、味噌汁。

一人暮らしのときみたいに自分の好きなものだけを適当に並べるのとは訳が違う、
『きちんとした朝ごはん』が、毎朝そこにある。

でも、その真ん中に座る自分だけ、
まだそこに馴染めていない感じがした。

父親は単身赴任でうちにはいない。

実質、義母と二人暮らしだ。