ドアが閉まる音がして、家の中に静けさが戻る。
「……なんか、変な感じ」
ぽつりと言うと、義母が首をかしげた。
「なにが」
「うちの玄関から春日井先輩が出ていくの」
「そのうち、〝ただいま〟って言って入ってくるようになるかもよ」
「未来予告やめて」
そう言いながら、
全然嫌じゃない自分に気づいて、
少しだけ笑った。
「ほら、テーブル拭いて。福神漬けこぼれてる」
「はいはい」
台ふきんを絞りながら、
ふと、さっきの食卓を思い返す。
カレーと、笑い声と、
ちょっとした恥ずかしい会話。
大げさなドラマも、
大きなステージもない、
ただの夜ごはん。
でも、心のどこかで、また一つ、
あたたかい灯りが増えた気がした。
君が照らす人生は、いつだって温かい。
――その灯りは、こういう場所から、
少しずつ広がっていくのだと思う。
きっと——。


